最後の晩餐


 マレーシア全土に緊急事態宣言が発令された1月12日夕方のクランバレー。13日から始まる再導入されることになった政府の移動規制措置(MCO)を目前に、家族の待つ地元へ帰省する人、最後の営業や買い出しに駆け回る人たちで街はあふれた。中にはリモートワーク用にオフィスのデスクトップパソコンを抱えてグラブに乗り込む人もいる。大勢の人々が行き交う中、ひときわ目を引いたのが、鮮やかなチョンサム(チャイナドレス)に身を包み、連れ立って歩く女性たち。聞くと、親しい友人と”最後の晩餐”に繰り出すのだという。

 新調したばかりのような目にも鮮やかなドレスに美しく髪をセットした女性達は口々に「今日を逃したら、今年は二度と”魚生(イーサン)”を楽しむことはできなくなるかもしれないから」と言う。レストランやホーカーは、今この国がパンデミック状態であることを忘れてしまうほど、満面の笑みで食事を楽しむ人々でにぎわっていた。



 そんな人々を横目に、タクシーを探すもなかなか捕まらない。1時間後にやっとありついたグラブの運転手も“最後の晩餐”に向かう途中だと言う。「あなたをを降ろしたら全速力で店に向かうよ。もうみんな待ってるんだ。アップタウン(ダマンサラ・ウタマ、プタリンジャヤ市)にあるホッケン・ミーの店は、本当に美味しいんだ。MCOが明けたらぜひ行ってみて」と、笑顔で語る。彼はペナンに家族を残し、単身でクアラルンプールで働いているという。


 感染拡大の要因の1つに挙げられる会食。心の免疫力アップのために必要だったに違いない。


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