世界的人気を集めるボールペン画家、橋本薫さんにインタビュー



 3月6日~17日(当初は19日までを予定。新型肺炎対策を受け、17日に終了)、クアラルンプール伊勢丹(イセタン・ザ・ジャパン・ストア)において、ボールペン画家の橋本薫さんによる、4回目となるマレーシア展示会が開催されました。


 ”薫画伯”として世界中に名を馳せる橋本さん。その例にもれずマレーシアでも根強いファンが数多く存在、当地での展示会開催の知らせを受けた多くのファンらが会場へ足を運び、展示会は大盛況のもとに終了しました。10年勤めた企業を退職し、画家として一本立ちした橋本さんの画家としてのこれまでと今後の抱負についてお話を伺いました。



会場にて作品を制作する橋本薫さん


ーー橋本さん、今回の展示会も大変好評でした。当地の英字新聞、ザ・スター紙による取材記事も拝見しました。改めまして、おめでとうございます。


 このような時期に多くの方々にお越しいただき、絵をお求めいただいたことは本当にありがたいことです。


 現地新聞の記事については、たまたま展示会場を通りかかった記者さんが、絵を描いていた私に興味を持たれ、取材を受けることになりました。アーティストが展示会場に在廊することの大切さを実感しています。


ーー2年前の当店初展示会も、KLのカフェで在廊展示会を開催しておられた橋本さんに、鈴木ストアマネージャーが声をかけられたのがきっかけでしたね。以来、KLではいつもこちらで開催されていますね。


 はい。百貨店で個展を開くことで、より多くのみなさまに絵をご覧いただくことができるようになりました。さらには「伊勢丹で展示会を開催した」という実績が、その後の展開に大きく影響しています。鈴木さんには心から感謝しています。





ーー橋本さんの作品は、絵自体の魅力はもちろんですが、完成までのプロセスが非常に緻密でユニークですね。実際に描いておられる様子を見ると、誰もが吸い込まれるように見入ってしまいます。


 「私にしか描けない絵を」と思考錯誤の末、現在の画法にたどり着きました。また、写真では表現できないことを描くことをモットーとしています。絵の中にジョークが散りばめられているのは、関西人の性。「ニヤリ」と笑ってもらえる要素を盛り込まなければ気が済まないのです。



在廊中に描いた作品たち


ーー橋本さんの作品は、すべて個性あふれるものばかりです。絵のテーマはどこから来るのでしょう?


 例えば「〇〇をテーマに描いてほしい」と依頼されても、描きたくなければまったく筆が進みません。


 私の場合、経験からしか、絵は描けません。でも「画家として生きよう」と腹をくくったあとは、イエスマンになることに徹底しました。企業に勤めていたころは「興味がない」とお断りしていたことも、画家として独り立ちをすると決めたあとは、「誘われたらなんでもやってみよう」と。それらの経験はすべて、その後の作品に生かされています。


ーー以前の作品はモノクロがほとんど。また作品の中心に描かれているものは、動物や抽象的な生物(龍や大蛇など)が多いように見受けられます。一方、最近の作品は色鮮やかで、女性が絵の中心に描かれ、画風も変化しています。



初期のころの作品


 カラフルな絵を描くようになったこと、また画風の変化は、画材の変化によるものです。画材メーカーさんがカラー筆ペンなどを提供してくださるようになり作品の幅が広がりました。「色のある作品が求められているなら使ってみよう」と。また、筆ペンを使うことで、立体的な表現が可能になりました。道具が増えたことで表現の幅が広がる、さらには、色鮮やかな絵を描くことで、私自身の心も華やかになり良いこと尽くめ。心から感謝しています。



富士山と招き猫の人気作品


 女性が絵の中心?言われてみれば、確かにそうですね。近頃、自立した強い女性を描きたいという衝動に駆られています。自画像を描いたことはありませんが、理想的な姿を絵に求めているのかもしれません。女性の周囲のキャラクターについては「主役に合うもの」を妄想しながら描いています。例えば、今回こちらで描いた“Enjoy your beach”は、マレーシアでビーチを楽しむ女性がモデルですが、当然のことながら当地にペンギンはいません。「寝転ぶ女性の上に、太陽に向かって歩くペンギンが現れたら面白いな」と。想像する過程も絵を描く楽しみの一つです。





ーー成功の秘訣は「在廊」だけではなく、SNSを駆使して展示会開催先を開拓されたことにもある?パリでの展示会を目指して一夜でフランス語のレジュメを作成されたこともあったとか?


 芸術の都パリで腕試しをしようと、まず兵庫県パリ事務所で個展を開催しました。ところがパリでの滞在費用は想像を遥かに超えてしまって・・・。黒字化を目指すため、他での開催も検討しなくてはならず。ワークショップ開催を条件に、パリ・ジュンク堂での開催にこぎつけましたが、それでも収支は厳しいままでした。でも、「パリにはユニクロがあるじゃないか!」と思い立ち、辞書にかじりついて一夜でフランス語のレジュメを書き上げた次第です。その時点では開催に至りませんでしたが、次のパリ個展開催に繋がりました。


ーーでは最後に、今後の予定、抱負をお聞かせください。


 新型肺炎の状況で、事業計画は大きく変化すると思います。しかし、私のモットーは「ケ・セラ・セラ」。画家としてできることを模索しながら、見てくださる方に明るい未来を思い描いてもらえるような絵を描いていきたいと思っています。そのためにも、常に明るく、ポジティブ思考で生きていかなくてはなりませんね。



『明日良いことありますように』


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 画家としての才能と、グローバル社会の潮流を乗りこなす才覚とタフさを併せ持つ橋本薫さん。その作品は、一度見ると病みつきに。先の読めない世の中だからこそ、妄想画家「薫画伯」の明るく楽しい作品に再び出会うべく、次の来馬を願ってやみません。なお、今回の滞在中に彼女が描いた最後の作品タイトルは、「明日良いことありますように」。

 このタイトル通り、みなさまにとって明日良いことありますように。(取材・写真/渡部明子)


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橋本薫さんの画家への道のり


 神戸市出身。アーティストを夢見て、芸術家志望が集まる兵庫県立明石高等学校美術科へ入学も、同級生らの才能を目の当たりにして自信を失い、一時は画家への道をあきらめる。

 高校卒業後は企業へ就職。10年の時を経て「ふと、ペンを持ちたくなり」、再び絵を描き始める。これが高じて、似顔絵などを1枚仕上げてはSNSにアップするように。やがてそれらの作品が話題となり、2016年には初個展を開催。改めて画家を目指すも「日本で成功するのは難しい」と実感し、海外進出を決意する。企業を退職後はシンガポール、マレーシア、パリ、タイ、ドバイ、シカゴなどで積極的に展示会場を営業開拓。訪れた土地の人々を魅了しファンを増やし、わずか3年で世界的人気を博すように。最近では「いいちこ」(焼酎)の全米ポスターに作品が採用されたことでも話題になった。

 日本でも、海外での評判を受け全国各地で展示会を開催。「逆輸入画家」として人気を呼んでいる。


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